ショートカットの呪縛、そして義母という女神

髪を切った女性を見たら、すかさず褒めてあげましょう

 

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昨夜、髪を切ったことについて、

下記のブログで長々と綴っているのだが、

 

www.an-kinashi.com

 

その話には続きがある。

 

 

上の記事を読んでもらえば分かるのだが、

肉親である両親や姉は、

一世一代の思いで長い髪を切った娘に向かって、

 

ーなんか、老けた?

 

と、言ったのだった。

 

ズタズタにされたココロをなんとか自分で拾いあげ、

その頭で次に訪れたのは、旦那の実家。

 

 

似た者夫婦

 

そんな薄情なことを云った家族と過ごす1日も終わり、

わたしたち夫婦は自宅に帰るべく、実家を後にした。

 

 

実家を出てまもなく、旦那が口を開く。

 

ー家に帰る前に俺の実家によってね。

 なんか、渡すものがあるから来てって

    昼に連絡がきてたから。

 

 

わたしの実家を出たのは、21時半を回った頃だ。

 

自宅と旦那の実家は車で10分ほどの距離だが、

今から高速に乗って帰っても1時間近くはかかる。

 

ということは、旦那の実家に着くのは22時半くらいになる。

 

土曜の夜ならまだしも、

明日から仕事という日曜の夜遅くに訪ねるなんて、

旦那は息子だからいいかもしれないが、

嫁としては気にしてしまう時間帯だ。

 

それに、家に帰ったら寝るだけにしようと、

実家でお風呂も済ませ、

もちろん化粧も落としてしまっている。

 

昼間に連絡がきてたのなら、なぜ言わない?

 

知っていたら、

もっと早くに実家を出ていたし、

メイクだって落とすことはなかったのだ。

 

 

そうは思ったが、

喧嘩になっても面倒だと思い直し、

わかったー

と、答える。

 

すると旦那は、

夕食時にビールを飲んだ旦那に代わって

ハンドルを握るわたしを横目に、

 

ーあ〜今日も疲れた〜。

 

と、助手席のシートを少し倒し、

日本たばこ産業株式会社である

かの有名なJTが手がけた

電子タバコ「Ploom TECH プルームテック」をくわえた。

 

旦那が吸うそれは、

煙は出るのだが、俗に云うタバコ臭さがまったくない。

 

これまでは、

車で吸わないのはもちろんのこと、

家でもベランダやキッチンの換気扇下が彼の定位置だった。

 

が、この「Ploom TECH プルームテック」に変えてからというもの、

家の中でも車のなかでもおかまいなし。

吸う回数が極端に増えたのは、云うまでもない。

 

いつものわたしなら、

電子タバコをふかして優雅に助手席に座っている旦那に対して、

内心イラっとするかもしれないが、

 

朝から仕事のスキルアップのために講義を受けにいき、

その後はわたしの実家を訪れてくれた旦那。

 

おかげで、わたしも実家でゆっくりすることができたわけで、

そんな旦那を思えば、

わたしも少しだけ優しくなれる。

 

 

だが、

 

ー疲れたでしょ? 寝てていいよ。

 

と、言えるまでは気が回らないところが

実にわたしらしい。

 

いま思えば、

旦那が少しでも眠れるように黙って運転できればよかったのだが、

わたしはというと、

スピーカーから流れる曲を大声で歌いながら、

気持ちよく高速道路を走っていた。

 

 

最初は、

 

ー音痴。

ー熱唱してるの見られたら恥ずかしいわ。

 

と、ブツブツ言っていた旦那だったが、

途中から楽しくなってきたのか、

 

ーカーン。ただいまの採点、30点!

ー次、なんの曲がいい?

 

と、どうやらノってきた模様。

 

インターをおりて一般道に出る頃には、

ふたりして大熱唱だった。

 

似た者夫婦とはこのことだ。

 

テンションMAXで何曲目かを歌い上げた頃、

旦那の実家に到着した。

 

 

ついに救われた、わたしのココロ

 

先に旦那をおろし、

車をキレイに止め直してから旦那の後を追う。

 

いつもは、勝手にドアを開けて入って行く旦那が、

まだ玄関の前にいるではないか。

 

どうやら、玄関が施錠されているようだ。

 

普段は押すことなのないインターホンを鳴らし、

出てきてくれるのを待つ。

 

すると、

磨りガラスの引き戸の向こうがぼんやりと明るくなった。

 

ーあんまり遅いから、今日はもう来ないかと思った。

 

そう、言いながら

 

義母が玄関の鍵を開けてくれた。

 

カチャっという音と同時に、

旦那が勢いよく玄関を開けて中に入っていく。

 

その後ろから

夜分遅くなって、すみません

と、詫びながら顔を出す。

 

 

義母の目には、髪を切ったわたしの姿がうつる。

 

 

ーあら、髪切ったのね!

 可愛いじゃない!

 

 

義母のその言葉に、思わず顔を上げる。

 

 

そう、それは

わたしが待ち焦がれていた言葉。

わたしは、

この言葉をずっと待っていたのだ。

 

 

旦那の云う可愛いは、

ショートカットに踏み切らせた自責の念も含まれるため、

ノーカウントとするならば、

 

この義母の“可愛い”というこの言葉が、

髪を切って初めてとなる、

正真正銘の褒め言葉なのだ。

 

 

この際、

お世辞でも社交辞令でも、何でもいい。

 

 

自ら決意して清水の舞台から飛び降りたわたしのココロは、

自らの判断で一度はふわりと上がり、

肉親の家族によってまた崖底に突き落とされ、

そしてようやく、

義母の手によって優しく包み込まれたのだから。

 

 

ー美味しそうな海老フライがあったから、   

   2つ買って来たの。

 油で揚げるだけだから、簡単よ!

 

そう言いながら、

わたしがさっきの言葉にどれだけ救われたか

知る由もない義母は、

海老フライが入った紙袋に、キュウリやズッキニーも入れて、

手渡してくれる。

 

 

そんな義母を見つめながら、

 

ーお母さん、ありがとうございますっ!

 

と、満面の笑みでお礼を言うわたし。

 

 

あまりの笑顔に、

 

この子、そんなに海老フライ好きなのかしら?

 

義母はきっと、そう思ったに違いない。

 

 

この日、

すでにお風呂も入り終え、

スッピンになったパジャマ姿の義母が、

わたしには女神のように輝いてみえた。

 

 

家族の手によって再び封印された

ショートカットの呪縛は、

義母の何気ないひとことのおかげで、

完全に解けたのだった。

 

 

義母が髪を切ったとき、

わたしは誰よりも先に

“素敵です!”と、伝えよう。

 

一日の終わりに、

そうココロに誓ったのだった。

 

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